全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
「これ、君が作ったのか?」

「はい。家庭教師の先生に刺繍を習ったので、ジャレッド様にもプレゼントしたいなと思って……」

 少し緊張しながらそう返す。もしかして迷惑だっただろうか。いくらでも良いものを手に入れられる立場のジャレッド様に、私が刺繍したハンカチなんていらなかったかもしれない。

 しかし、そんな不安はジャレッド様が向けてくれた笑みで吹き飛んだ。

「ありがとう、大切にするよ。こんなプレゼントをもらえるなんて嬉しいな」

 私はすごく幸せな気持ちになった。ジャレッド様が受け取ってくれた。大切にしてくれると言う。先ほど一瞬、彼の顔に蔑みの色が浮かんだように見えたのは気のせいだったのだ。

 今までの頑張りが全て報われた気がした。

 その日は、お茶会の間中ずっとはしゃいでいた。ジャレッド様は、そんな私を笑顔で見つめてくれていた。


***

 ジャレッド様は、その後ハンカチをちゃんと使ってくれている。

 お茶会から数日後にお父様と王宮を訪れる機会があったのだけれど、その際に私があげたハンカチを懐から取り出して見せてくれたのだ。私はとても嬉しくなった。
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