全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
「なんだか違うわ……思っていたのと違う……」

 初めて顔合わせをした日、この人が婚約者になるのだとジャレッド様を紹介されたときはとても嬉しかった。金髪碧眼で優しげな笑みを浮かべる彼は、物語に出てくる王子様そのままだったから。

 でも、それ以降、会う度になんだか違うという感覚は大きくなるばかり。

 思い描いていた婚約者って、こんな風だったっけと思ってしまう。


「……なんて、こんなことを言ったら怒られるわよね」

 本心ではちゃんとわかっている。ジャレッド様だって、何も好きで私の婚約者になったわけじゃない。

 彼がリスベリア王国の第一王子で、私がアメル公爵家の娘だから婚約が決まっただけ。愛想笑いでもしてくれるだけ感謝しなければならないのだ。

 ……お父様だって、教育係だって、いつもそう言っているもの。

 それでも虚しい思いは心から消えず、私は机の前で思い悩み続けた。
< 192 / 197 >

この作品をシェア

pagetop