全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
***

 エノーラの家から馬車で帰る途中、私はぼんやり考えていた。

 私の婚約者に対する理想って、一体どこから出てきたんだろう。

 エノーラにも言った通り、身近にいる夫婦なんて両親を筆頭に冷めきった関係の人たちばかりなのに。なんでこうも具体的に理想の人が思い描けるのかしら。

 不思議に思っているうちに、馬車はアメル公爵邸に到着した。


「おかえりなさいませ、お嬢様。お荷物お持ちいたします」

 お屋敷に着くなり、執事のサイラスがやって来て鞄を持ってくれた。

「ありがとう。今日はね、エノーラにたくさん話を聞いてもらったの」

「それはよろしかったですね。何の話をされたのですか?」

「主にジャレッド様に対する愚痴よ」

「それはそれは。旦那様には聞かせられない話ですね」

 サイラスはそう言ってくすくす笑った。

 サイラスは荷物を抱え、私の部屋までついて来てくれる。

 部屋まで歩く間、ほかの使用人たちには聞かれないように、今日エノーラに話したジャレッド様への愚痴をこそこそ話した。

 真面目な顔でうなずきながら聞いてくれていたサイラスだけれど、エノーラがジャレッド様への悪口に全力で同意してくれた件を話すと、おかしそうに笑っていた。

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