全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
「いいご友人ですね。お嬢様は何も不満をおっしゃらないので、少し心配だったんです。本音を吐き出せたようで安心しました」

「そう……? 将来王太子妃になるんだから、これまでみたいに小さなことで文句を言ったらいけないと気をつけていたんだけど」

「立派なお心がけですが、無理に本音を閉じ込めることはないのですよ」

 サイラスは慰めるようにそう言ってくれる。


 真っ直ぐに私を見つめる彼の目を見ながら、ふと思う。

 私は初めて婚約者と顔合わせをすることになったとき、サイラスみたいな人を想像しなかったかと。

 ジャレッド様に冷たくされるたび、サイラスだったらもっと私のことを考えてくれるのにと思ってはいなかっただろうか。

 私は慌てて頭を振ってそんな考えを振り払う。

 専属執事のサイラスと、婚約者であるジャレッド様からの扱いが違うなんて当然のことじゃないか。

 そうか、サイラス基準で考えているから、余計にジャレッド様の態度をつらく感じてしまったのかもしれない。

 私はサイラスに甘やかされるうちに、ひどくわがままになってしまったらしい。
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