全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
「サイラス、あまり私のわがままを聞かなくていいからね」
「? お嬢様はちっともわがままではありませんよ」
「ほら、そういうところよ。私がアメル家の令嬢だからって気を遣わないで、たまには厳しく接していいのよ。いつも厳しいのは嫌だけど」
私は真剣にそう告げる。あくまで「たまに」と強調しておいた。
わがままになるのは避けたいけれど、サイラスが完全に甘やかしてくれなくなるのは寂しいからだ。
「お嬢様はいつも十分頑張ってらっしゃいます。私の前でくらいは気を抜いてくださっていいのですよ」
サイラスは柔らかく笑ってそう言う。
「でも……」
「私としては、お嬢様には幼い頃のように周りを気にせず遊び回って欲しいくらいです。家庭教師の先生の授業を抜け出して困らせたり、早朝に隣国まで遊びに行きたいと駄々を捏ねてらした頃が懐かしいです」
「……サイラス、やっぱり私のことわがままだと思ってない?」
思い出す内容がどう考えてもわがままエピソードばかりだ。私が疑いの目を向けると、サイラスは笑顔のままで言った。
「思っていませんが、お嬢様でしたらいくらわがままを言ってくださっても構いません」
「そう……? え、いや、だめよ。私はちゃんと王太子妃にふさわしい人になって、いつかジャレッド様にこちらを見てもらうんだから!」
私が力を込めて言うと、サイラスは「それは立派なお心掛けですね」と褒めてくれる。
けれど、その表情は少しだけ寂しそうに見えた。
「……あのね、だからサイラスもずっとそばにいて応援してくれる? サイラスがいたら私、これからもちゃんと頑張れると思うの」
尋ねると、サイラスの表情はたちまち明るくなる。
「もちろんです。いつでもおそばで応援しています」
「本当? 約束よ!」
私はサイラスの答えに満足して、幸せな気持ちで言った。胸の中に、なんだかふわふわした感情が広がっていく。
胸に広がるその温かな感情が何なのか、自分でもよくわからなかった。
終わり
「? お嬢様はちっともわがままではありませんよ」
「ほら、そういうところよ。私がアメル家の令嬢だからって気を遣わないで、たまには厳しく接していいのよ。いつも厳しいのは嫌だけど」
私は真剣にそう告げる。あくまで「たまに」と強調しておいた。
わがままになるのは避けたいけれど、サイラスが完全に甘やかしてくれなくなるのは寂しいからだ。
「お嬢様はいつも十分頑張ってらっしゃいます。私の前でくらいは気を抜いてくださっていいのですよ」
サイラスは柔らかく笑ってそう言う。
「でも……」
「私としては、お嬢様には幼い頃のように周りを気にせず遊び回って欲しいくらいです。家庭教師の先生の授業を抜け出して困らせたり、早朝に隣国まで遊びに行きたいと駄々を捏ねてらした頃が懐かしいです」
「……サイラス、やっぱり私のことわがままだと思ってない?」
思い出す内容がどう考えてもわがままエピソードばかりだ。私が疑いの目を向けると、サイラスは笑顔のままで言った。
「思っていませんが、お嬢様でしたらいくらわがままを言ってくださっても構いません」
「そう……? え、いや、だめよ。私はちゃんと王太子妃にふさわしい人になって、いつかジャレッド様にこちらを見てもらうんだから!」
私が力を込めて言うと、サイラスは「それは立派なお心掛けですね」と褒めてくれる。
けれど、その表情は少しだけ寂しそうに見えた。
「……あのね、だからサイラスもずっとそばにいて応援してくれる? サイラスがいたら私、これからもちゃんと頑張れると思うの」
尋ねると、サイラスの表情はたちまち明るくなる。
「もちろんです。いつでもおそばで応援しています」
「本当? 約束よ!」
私はサイラスの答えに満足して、幸せな気持ちで言った。胸の中に、なんだかふわふわした感情が広がっていく。
胸に広がるその温かな感情が何なのか、自分でもよくわからなかった。
終わり