全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
 そんな日々を送るうちに、ついにカミリアが正式に聖女の称号を賜る日がやって来た。

 この儀式はリスベリア王国で古くから重要視されてきたもので、必ず王族が見守る中で行われる。王太子の婚約者である私も神殿に招かれた。

 儀式の参加者には、リスベリア王国を統治し神殿の者と共に守っていく証として、神殿内部に入るための鍵が与えられる。

 神殿でも上の立場にある者と王族、王族に近しいものにしか与えられない特別な鍵だ。

 金色の小さな鍵を受け取りながら、私は心の内でため息を吐いた。

 いくら王族に近しい者としての証をもらっても、実情は王子に見放されている人間に過ぎないことは痛いほどよくわかっていたから。


 儀式が行われる部屋は、普通の教会を一回り小さくしたような造りをしていた。

 前方には祭壇があり、部屋の中央には椅子が数列に分かれて並んでいる。部屋中が大量のランプと花で飾り付けられていた。

 私はジャレッド王子と並んで座り、祭壇の前の舞台で神官様と向かい合うカミリアを眺める。

 ジャレッド王子は真剣な目でカミリアを見ていた。その目は明らかに私に向けるものとは温度が違っていて、苦々しい気持ちが胸に広がる。
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