全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
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 私の一度目の人生は、最悪な形で幕を下ろした。

 始まりは、婚約者であるリスベリア王国の王太子ジャレッド・ハーディング殿下に婚約破棄を告げられたこと。

 彼は、私が聖女カミリアをいじめたなどと事実無根の主張をして、みんなの前で断罪した。


 王子に婚約破棄された上に聖女に危害を加えたとあっては、いくら公爵令嬢といえども立場が悪くなるのは免れられない。

 私の住むリスベリア王国は、五百年前に女神様と英雄が力を合わせて建国したと言われている。

 女神を祀る神殿は現在でも大きな影響力を持ち、女神に加護を与えられた存在である聖女も同様に大きな力を持っているのだ。

 そんな聖女を敵に回して、ただで済むはずがない。

 私は社交会の隅に追いやられ、家族からも疫病神と罵られて、あっという間に居場所を失ってしまった。


 何度も自分の運命を呪った。

 親に決められた婚約者ではあったけれど、私はジャレッド王子のことが好きだったのだ。

 王子の婚約者にふさわしい自分であろうと、常に自分を抑え、わがままを言わず、やりたいことも欲しいものも全て我慢してきた。


 それなのに、ジャレッド王子が選んだのは自由奔放でわがまま放題のカミリアのほう。

 特別な聖魔法の力を持っていることがわかり平民から王宮で暮らす聖女になったカミリアは、堅苦しい王族や貴族たちの間でもよく目を引いた。

 その甘えたような無邪気な笑みに、ジャレッド王子だけでなく第二王子のミリウス様や、宰相のご子息、王宮の魔導士長まで心を奪われていくのが傍で見ていてわかった。

 愛するカミリアに危害を加えた者として権力者たちから恨みを買った私は、もう這い上がることのできない立場まで落とされてしまった。

 当時の私にできたのは、公爵家の部屋でただ一人声を殺して泣くことだけ。

 ジャレッド王子が、そして何よりカミリアが憎くて堪らなかった。

 私をこんな目に遭わせておいて、あいつらが幸せになるなんて許せない。
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