全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
 リーシュの神殿は、王城から少し離れたところにある、お城のような外観をした立派な神殿だ。

 今日も神殿にはたくさんの人々が詰めかけている。

 敬虔な信者らしき人から、家族でお散歩代わりに訪れたような人まで、訪れる人々の種類は幅広い。

 リーシュの神殿は二階から上こそ関係者以外の立ち入りを厳重に禁止しているものの、一階部分と庭園には誰でも自由に入れるようになっている。

 庭園から少し歩いた先にはお店の集まる通りもあるため、リスベリア王国民の憩いの場になっていた。

 私とサイラスは、人々の中に混じって神殿の門をくぐる。


「神殿に来るのなんて久しぶりだわ。カミリアの聖女の儀を見たとき以来かしら」

 その儀式のときも促されるまま神殿の二階に上がり儀式を見ただけで、賑やかな一階や庭園には足を運ばなかった。

 カミリアが王都にやって来てジャレッド王子が彼女を気に入りだしてから、神殿は私にとって不愉快な場所でしかなかったので、極力近づかないようにしていたのだ。

「今日はカミリア様に会う心配はありませんから、安心して過ごせますね」

 サイラスはいたずらっぽく笑って言う。本当ね、と私も笑顔でうなずいた。


 人々の列に続いて祭壇の間まで進む。

 中へ入ると、奥のほうに大きな白いカーテンが見えた。白く透き通るカーテンの中はうっすらと光っている。あの中に女神様がいるとされているのだ。

 私とサイラスは部屋の入口で女神様に捧げる花束をもらい、祭壇の前にできた列に並んだ。順番が来て祭壇の前に立つと、カーテンの前にそっと花束を置く。

 すでにたくさんの人がお供えしてあるため、祭壇の前は色鮮やかな花でいっぱいだった。

 手を組み合わせて女神様の前でお祈りをする。私は今までの人生で一番というくらい真剣に、ここにいるというリーシュ様に語りかけた。


 リーシュ様。時を巻き戻してくれたのはあなたなのですか。

 もしそうならお礼を言わせてください。心からの願いが叶って私はとても幸せです。

 二度目の人生では、絶対に大切なものを間違えたりしません。だからどうか見守っていてください。
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