全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
「ルディ様、おあいにく様ですけれど、私……」

「すみません、ルディ様。今日は二人で出かける予定で来たんです。またの機会にしてもらえないでしょうか」

　私が言うより先に、サイラスが私をかばうように前に出てルディ様に言った。ルディ様は目をぱちくりしてサイラスを見ている。

　ああ、きっとサイラスは私が困っているのに気づいて間に入ってくれたのだ。

　前回の人生を知らないサイラスは私がなぜルディ様を嫌うのかわからないだろうけれど、きっと表情で何かを察したのだろう。

　さすがサイラスだ。私のことをよくわかっている。


「ええと……、君、アメル公爵家の執事だよね？　僕は使用人じゃなくてエヴェリーナさんに聞いてるんだけど」

　ルディ様は困ったような笑みを浮かべて言う。若干馬鹿にした表情なのが何とも腹立たしい。私はサイラスの腕をつかんで、はっきりと言った。

「そうなんです！　私、今日はサイラスと二人で回りたいの！　ルディ様は別の方を見つけてくださるかしら？」

　そう言うと、ルディ様はぽかんとした顔で私を見た。

　返事を聞く前にサイラスの腕を引いて駆け出す。いつも隙のないルディ様が間抜けな顔をしていたのがおもしろくて、走りながらつい笑いそうになった。

　通りの奥にある広場まで来て、ルディ様の姿がすっかり見えなくなったところでやっと足を止める。
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