全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
「少し様子がおかしいようには見えましたが、そこまで嫌ってらっしゃるとは思いませんでした。ただ私情で……」

「私情?」

「せっかくお嬢様が私と一緒に出かけてくださっているのに、邪魔されたくなくて。すみません……」

 サイラスは顔を赤らめてそう言った。
 邪魔されたくなくてなんて珍しく子供っぽいことを言うので、私はつい笑ってしまう。

「私といるのを邪魔されたくなかったの?」

「はい……」

「ふふっ、私も! ルディ様なんかに邪魔されたくないわ。今日はずっと二人でいましょうね」

「お嬢様……!」

 手を取って言ったら、サイラスは感極まったようにこちらを見た。
 
 なんだか胸がくすぐったい。どうしてかしら。私を気遣って止めてくれたのだと思ったときよりも、ただ邪魔されたくなかったと言われたときのほうが嬉しいなんて。

 私はサイラスの赤くなった顔を眺めて、思わず笑みをこぼす。

 自分でも理由はわからないけれど、なんだかすごく晴れやかな気分だった。
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