全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
「お兄様のクリス様に頼まれてはいかがですか? クリス様ならとやかく言うような者はいないのではないでしょうか」
「お兄様、来てくれるかしら……。いつもお忙しそうだし、時間を押してまで妹のピンチを助けてくれるような人じゃないのよね……」
一番上の兄クリストファーは、私が婚約破棄されたことを知るといかにも不快そうな顔で、「これ以上の醜聞は避けろよ」と忠告してきた。励ましてくれたりとかは一切なかった。そういう人なのだ。
「それでは、ディラン様に来ていただいてはどうでしょう」
「ディランお兄様かぁ……。うーん、ディランお兄様も協力してくれなそう……」
二番目の兄であるディランお兄様はクリスお兄様よりは私を気遣ってくれて、婚約破棄騒動の後も手紙をくれた。けれど、どうにも自由過ぎる。
現在家を出て遠くの街で暮らしているお兄様が、わざわざ私のために遠方から戻ってきてくれるなんて期待はできそうもなかった。
私の身内は何とも頼りにならない。
サイラスは困り顔になってしまった。真面目な顔でアメル公爵家と関りのある家の貴族の名前を呟きながら考え込んでいる。
「いいわ。伯母様についてきてもらって、エスコートなしで行くから。伯母様は割と私に同情的だから頼めば来てくれると思うの」
「しかし……」
サイラスは心配そうな顔でこちらを見る。
わかっている。多分、こういう状況も予想しての招待なのだろう。
ジャレッド王子やカミリアは、おそらく元は王子の婚約者であった私が一人寂しくパーティーに参加するところを見たいのだ。彼らの思う通りにするのは癪だけれど、どうしようもない。
しかし、横で考えこんでいるサイラスに、私は大丈夫だと言いかけて、ふととてもいいことを思いついた。