全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
 屋敷を飛びだしてサイラスの閉じ込められている牢獄まで向かう。

 しかし、当然中には入れてもらえない。諦められず門の前で中に入れてと喚いていたら、門番に放りだされてしまった。

 私の腕を掴んだ門番は、「刑は確定していますから、諦めてください」とめんどくさそうな声で言った。

 釈放された私がベッドの上で死んだように過ごしている間に裁判は進み、覆せないところまで来ていたのだ。

 そうして何もできないまま、無実のサイラスは愚かな女の代わりに処刑されてしまった。


 それからの日々は、何も考えられないままただ呆然と過ごした。

 どうしてサイラスが。どうして私なんかを。そんな言葉ばかりが頭に浮かんで消えてくれない。

 私は王子やカミリアや、手の平を返すように冷たくなった周囲の人間を恨むばかりで、変わらず気にかけてくれるサイラスを見ようとしなかった。

 あんなに私を励まそうとしてくれたのに。

 あんなに私の無実を信じてくれたのに。

 お礼すら言わないまま、私はサイラスを死なせてしまった。

 無実ということになり屋敷に戻っても、周囲は相変わらず冷たい。けれど、もうどうでもよかった。

 家族も周りの貴族たちも、ジャレッド王子やカミリアですらどうでもいい。ただ、サイラスを死なせてしまったことだけが、胸に鉛を埋め込まれたように私を息苦しくさせる。

 日に日に絶望が募っていく。このまま生きていくことに希望を見いだせなかった。だって私はすぐそばにあったはずの希望をなくしてしまったのだ。


 そんな日々を送って数ヶ月、私はとうとうサイラスが命がけで助けてくれた命を投げだしてしまった。

 胸にナイフを当てながら懺悔する。

 神様、ごめんなさい。私は手に入らないものばかり望んで、そばにある救いを無視し続けました。

 どうか、私を憐れんでくださるなら願い事を一つ聞いてください。

 私はどうなってもいいから、サイラスが次の人生で幸せになれますように……。
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