全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
***

 死に際にそう願ったからなのだろうか。

 私は再び目を覚ました。

 そこは、王宮の控え室のようだった。私は鏡の前に座り、侍女のマリエッタに髪を整えられている。マリエッタは鏡の中の私を見ながら、目を輝かせて言った。

「お嬢様、とてもお綺麗ですよ! ジャレッド様も見惚れてしまうんじゃないかしら。カミリアなんて女、目じゃありません!」

「え……?」

 以前も聞いたことのあるセリフだった。

 ジャレッド王子に婚約破棄された日、全く同じシチュエーションでマリエッタに同じ言葉をかけられた。

 言葉だけではない。着ているドレスも、控え室の様子も、目に映る光景全てに見覚えがある。

 私はおそるおそる口を開く。

「ねぇ、マリエッタ。今日はもしかして……ジャレッド様の十九歳のお誕生日……?」

「えっ? お嬢様、何をおっしゃっているんですか? もちろんそうですよ。今日はジャレッド様の誕生記念パーティーに参加するために王宮にやって来たんじゃないですか」

 マリエッタは不思議そうな顔でそう言った後、体調が悪いのではないかと心配そうに尋ねてきた。私は戸惑いながらも大丈夫だと笑ってみせる。

 どういうこと? まさか、時が戻って数ヶ月前に戻ってきたとでも言うのだろうか。

 髪と衣装を整え終わると、まだ状況を理解しきれないまま、王宮の使用人に促されてパーティー会場まで向かう。

 そこで起こることも全て既視感があった。

 じわじわと、自分が本当に過去に戻ってきたのだと理解する。

 ということは、ここに……サイラスもいるのだろうか。
< 7 / 197 >

この作品をシェア

pagetop