全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
***
それからしばらく経ったある日、執事長に頼まれた書庫の整理が終わって公爵邸の廊下を歩いていると、窓の外に水道のそばでうなだれているお嬢様の姿を見つけた。
気になってそこまで行くと、お嬢様は悲しそうに目を伏せて一点を見つめている。何かあったのかと不安になり、私は急いでお嬢様に近づいた。
「お嬢様、どうかされたのですか?」
尋ねると、お嬢様は顔をあげてこちらを見る。その顔にはいつもの楽しげな笑みではなく、悲しげな表情が浮かんでいた。
「サイラス……」
「どうなさったんですか。誰かに何かされたんですか? それともどこかけがでもされたのですか?」
慌ててお嬢様の全身を見渡すが、けがらしきものは見当たらない。
「違うの。大したことではないの」
「けれど顔色が悪いですよ。どこか体調が悪いのでは」
不安になりながら尋ねると、お嬢様は少し気まずそうに目を伏せながら言った。
「そうじゃなくて、お花が萎れちゃったの……。毎日水をあげて大事にしてたのに」
水道のほうを見遣ると、すっかり萎れて変色してしまったあの紫色の花が置いてあった。
私はやっとお嬢様の沈んでいた理由を理解する。同時に誰かに何かされたわけでも、体調が悪かったわけでもないことにほっとした。
「……それは残念でしたね。けれど、お花ならまた摘めばいいではないですか」
「でも、この花をもう少し長く飾っていたかったわ。サイラスとお揃いなのに……」
お嬢様は名残惜しそうに花を見ている。
お嬢様が悲しんでいると言うのに、彼女の言葉をつい嬉しいと感じてしまった。お嬢様は私とお揃いの花を、それほど大事にしてくれていたのか。
それからしばらく経ったある日、執事長に頼まれた書庫の整理が終わって公爵邸の廊下を歩いていると、窓の外に水道のそばでうなだれているお嬢様の姿を見つけた。
気になってそこまで行くと、お嬢様は悲しそうに目を伏せて一点を見つめている。何かあったのかと不安になり、私は急いでお嬢様に近づいた。
「お嬢様、どうかされたのですか?」
尋ねると、お嬢様は顔をあげてこちらを見る。その顔にはいつもの楽しげな笑みではなく、悲しげな表情が浮かんでいた。
「サイラス……」
「どうなさったんですか。誰かに何かされたんですか? それともどこかけがでもされたのですか?」
慌ててお嬢様の全身を見渡すが、けがらしきものは見当たらない。
「違うの。大したことではないの」
「けれど顔色が悪いですよ。どこか体調が悪いのでは」
不安になりながら尋ねると、お嬢様は少し気まずそうに目を伏せながら言った。
「そうじゃなくて、お花が萎れちゃったの……。毎日水をあげて大事にしてたのに」
水道のほうを見遣ると、すっかり萎れて変色してしまったあの紫色の花が置いてあった。
私はやっとお嬢様の沈んでいた理由を理解する。同時に誰かに何かされたわけでも、体調が悪かったわけでもないことにほっとした。
「……それは残念でしたね。けれど、お花ならまた摘めばいいではないですか」
「でも、この花をもう少し長く飾っていたかったわ。サイラスとお揃いなのに……」
お嬢様は名残惜しそうに花を見ている。
お嬢様が悲しんでいると言うのに、彼女の言葉をつい嬉しいと感じてしまった。お嬢様は私とお揃いの花を、それほど大事にしてくれていたのか。