全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
「何なに? いいわよ。なんでも聞いてあげるわ!」

「あはは、まだ内容を言ってないのにいいんですか?」

「もちろん。サイラスの頼みならなんだって全力で叶えてあげるから」

 そう言ったらサイラスはくすくす笑いだす。

「実は、来週あたりにディラン様の住むシュティアの街に行きたいんです。ディラン様に連絡をしたらお屋敷に泊めてくれるとおっしゃり、旦那様も快く休みをくださったのですが……」

 サイラスはそう言ってちょっと迷うような仕草をした。

「私一人だと心細いので、お嬢様も一緒に来てくれないでしょうか?」

 遠慮がちにそう言うサイラス。

 シュティアの街とは、私の二番目の兄であるディランお兄様が住む街だ。

 王都のすぐ隣にあるアメル領からは少し離れた場所にある。といっても、リスベリア王国自体小さな国だし、そこまで距離があるわけではない。

 私は首を傾げてサイラスを見た。

「シュティアの街に行くのが心細いの? お屋敷の仕事でほかの街に一人で行かされることよくあるじゃない」

「行きますが、シュティアの街は遠いので」

「そうなの? なんだか不思議ね。でも、もちろんいいわよ。一緒に行きましょう」

 ちょっと疑問に思いながらもそう言ってサイラスの手を両手で握ったら、サイラスは少し顔を赤らめて、嬉しそうにお礼を言ってくれた。
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