全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
「ありがとうございます、お嬢様。それではすぐにディラン様に来週一週間ほど滞在すると連絡を入れてきます!」
「え、一週間も?」
「旦那様にはお嬢様がしばらく王都を留守にすることの許可は取ってあるので心配いりません。お嫌ですか?」
私に聞く前からお父様に許可を取ったの? 珍しく強引なサイラスに首を傾げる。
「いいけど、来週はリーシュの祭典があるから国中から人が集まるでしょう。混雑するんじゃないかしら……」
そう言いながら、ふと思い至る。ああ、だから……。
「それなら祭典に来る方たちと被らないように、少し早めに出発しましょう。ディラン様にもそうお伝えして……」
「ねぇ、サイラス」
「なんでしょうか?」
「来週のリーシュの祭典の日に私を王都にいさせないために、シュティアの街へ行くの?」
尋ねると、サイラスの動きが止まった。
それから言い訳を考えるように目を泳がせ始める。その表情だけで肯定しているようなものだった。
「そういうことだったのね。だから心細いなんて心にもないこと言ったの」
「す、すみません……」
初めてサイラス自ら頼みごとをしてくれたと思ったのに、結局私のためだったようだ。
サイラスはきっと、私がリーシュの祭典の日にジャレッド王子とカミリアが仲良く馬車で街を回るのを見て落ち込むと思ったのだろう。
当日街に出なくても、リスベリア王国の一大イベントである祭典の話は数日間は人々の話題に上るだろうから、噂を聞くのは避けられない。
だからお祭りの期間中、私を王都から遠ざけておくつもりだったのだ。