冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
「あ、あの…、朝と格好が違っていたので…
びっくりして…。」
咄嗟にそう取り繕って何事も無かったかの様に振る舞う。
「ああ、要人警護の時は目立たぬように軍服を脱ぐんだ。」
そう言えば…あの人も軍人だと言っていたような。
「風邪を引くぞ。」
正臣様がパッと私の手握り、
温かい居間へと連れて行ってくれる。
「寝てなかったのか?」
部屋に入るなり私を火鉢近くに座らせて、
自分で着替えをし始めるから、
慌てて駆け寄りお手伝いをする。
「1人で大丈夫だったか?」
正臣様が私を気遣いそう聞いてくる。
「はい…。
お借りした本を読んでいたら夢中になり過ぎて、いつの間にか時間が過ぎていました。」
「そうか。それより顔色が悪く無いか?
ちゃんと夕飯は食べたのか?」
目敏く指摘されてドキッとする。
「お夕飯は1人なので申し訳なくて…
自分で軽く作って食べました。」
食べて無いなんて言えなくて、
嘘をついてしまった。
後ろめたくなって俯き、
ひたすらお着替えの手伝いに没頭する。