冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
女中にちゃんと夕飯を作らせるように諭される。
「ああ、そうだ。これ手土産だ。」
そして紙袋を渡される。
中を覗くと和菓子屋の紙袋に包まれた箱が入っていた。
「今から食べるか?」
正臣様が気遣って聞いてくれるのだが、
「寝る前に甘い物は…なんだか悪い事をしているみたいで…気が引けます。」
と、食べたいと言う気持ちをひた隠しにする。
「誰が咎める?俺が誘ってるんだ気にせず食べるぞ。」
「はい…。では…用意します。」
嬉しさを隠しきれず思わず笑みが溢れる。
その後、お風呂場へ行こうとする正臣様を止めて温かい部屋で足を清めて頂きたいと、
テキパキと用意をする。
母が亡くなる前の1カ月間、
家で介護をしていたから戸惑わず支度を整える。
男の人なのに足のつま先まで綺麗だなと思いながら、丁寧に足の指から洗い始める。
「待て。そこまでやらなくて良い…。
後は自分でやるから。」
そう止められてハッと気付く。
正臣様にとっては迷惑でしか無いのかも知れないと…。