冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
極秘警護2日目、
特に問題無く総理を自宅に送り、
今夜も前田の運転で自宅に戻る。

9時前、昨夜よりも若干早い。
香世は起きているだろうか…。
前田が用意したプディングを手土産に家路を急ぐ。

「しかし、この時間まで女性が1人って言うのも物騒ですね。守衛が必要じゃないですか?」

「お前がやるって言うんだろ?」
懲りない奴だなと思いながら適当にあしらう。

確かに物騒だとは思う。
どうするべきか思案中だ。
部下の誰かに頼めば早いのだが誰でも良い訳では無い。

香世に近付いても害の無い人物。
出来れば既婚者が1番安心だ。
意外と上司以外の既婚者が少ない事に思いあたる。

どうしたもんかと思案に暮れる。

「僕が1番安心安全ですって。」

「お前は何でそこまで香世に近付きたいんだ。」
正臣は冷めた目つきで前田を見る。

「だって僕が見つけ出したんですから、
少しぐらいお近付きになりたいんですよ。
身分はわきまえてますし、
ボスから奪おうなんてこれっぽっちも思ってません。貴方を敵に回したら職を失う訳ですから。」

確かにそうだな。

「…分かった。 
お前を信用して夕方空いた時間で、
香世の様子を見守ってくれ。
ただ、3年前の事は絶対に言うな。」

「分かりました。
僕はボスの幸せを願う一下臣ですから、
香世様をお守りします。」
何処となく嬉しそうな前田に苛立ちながら、
正臣はため息を吐く。
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