冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
「良かったぁ…。」
香世は両手で顔を覆い流れ出す涙をひた隠し、走ったせいか肩で息をしている。
「はぁー。心配させないでくださいよ。」
苦笑いしながら前田は2人に近付く。
「すまなかった、心配かけたな…。
怪我をしたのは真壁だ。
俺はなんとも無い。」
正臣は心配そうな顔で香世の様子をひたすら伺う。
そんな様子を前田は横目で見ながら
2人の距離をもどかしく思い、
背中を押してやろうかと思うのだが、
今朝の叱咤激励の手前、
これ以上のお節介は野暮だと考え直す。
正臣に目をやると、
なんとも無いと言いながら、背広を脱いだシャツにはネクタイは無く、返り血と埃で薄汚れている。
激しい戦闘があったのは一目瞭然だ。
「ボス、これ着替えです。
あなたが大丈夫なら俺に用はないので、
車に戻ってます。」
風呂敷包みを正臣に渡し前田は安堵の表情で背中を向け、玄関に向かって歩き出す。
「ああ、悪いな…前田、ありがとう。」
こう言う時でさえ、
俺のボスはお礼を忘れないのか、と誇らしく思う。
手を上げ後ろ手に振りながら前田は鼻を啜り去って行く。
正臣は香世を近付くの長椅子に誘導し、
隣に座り、ひたすら泣き止むのを見守る。
ズボンのポケットを探るがハンカチは無く…
そういえば、
真壁の怪我の止血の際に使ってしまったんだと思い出す。
香世は両手で顔を覆い流れ出す涙をひた隠し、走ったせいか肩で息をしている。
「はぁー。心配させないでくださいよ。」
苦笑いしながら前田は2人に近付く。
「すまなかった、心配かけたな…。
怪我をしたのは真壁だ。
俺はなんとも無い。」
正臣は心配そうな顔で香世の様子をひたすら伺う。
そんな様子を前田は横目で見ながら
2人の距離をもどかしく思い、
背中を押してやろうかと思うのだが、
今朝の叱咤激励の手前、
これ以上のお節介は野暮だと考え直す。
正臣に目をやると、
なんとも無いと言いながら、背広を脱いだシャツにはネクタイは無く、返り血と埃で薄汚れている。
激しい戦闘があったのは一目瞭然だ。
「ボス、これ着替えです。
あなたが大丈夫なら俺に用はないので、
車に戻ってます。」
風呂敷包みを正臣に渡し前田は安堵の表情で背中を向け、玄関に向かって歩き出す。
「ああ、悪いな…前田、ありがとう。」
こう言う時でさえ、
俺のボスはお礼を忘れないのか、と誇らしく思う。
手を上げ後ろ手に振りながら前田は鼻を啜り去って行く。
正臣は香世を近付くの長椅子に誘導し、
隣に座り、ひたすら泣き止むのを見守る。
ズボンのポケットを探るがハンカチは無く…
そういえば、
真壁の怪我の止血の際に使ってしまったんだと思い出す。