冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
(正臣side)
香世が軍病院まで駆けつけて来たのは予想外で、動揺はしたが嬉しくもあった。
前田に礼を言いながら、
香世を落ち着かせる為、近くの長椅子に座らせる。
かける言葉が見当たらない…
しばし無言で寄り添うが、
香世は一層俯いてしまい顔を伺い見る事も出来ない。
背中を優しく撫でてみる。
ヒックヒックと肩を揺らすから逆効果だったかと思う。
だが、触れてしまった手を離す事も出来な い。
「香世、もう大丈夫だ。心配いらない。
そんなに泣くな…。」
そっと寄り添いそう呟く。
香世が顔を上げて、真っ赤な目で涙を溜めて俺を見てくる。
思わず抱きしめたい衝動に駆られるが、
気持ちをぎゅっと制御して、
「来てくれてありがとう。心配かけて悪かった。」
改めてお礼を言う。
ふるふると首を左右に振る香世のあどけない仕草が、可愛いなと思って見つめてしまう。
俺は照れ笑いしながら前を向き、
診察室のドアを見つめる。
「正臣様…頬に…傷が…。」
香世が不意に手を伸ばし俺の頬に触れるからビクッとして目を見張る。
「大丈夫だ…、痛く無いから。」
何気なく離れようと試みる。
「少しお待ち下さい。」
香世がパタパタと洗面所に駆けて行き、
ハンカチを濡らして戻って来る。
心配顔で近付いて来て、
顔を濡れたハンカチで優しく拭いてくれる。
「沁みますか?」
「…いや、大丈夫だ。」
「他に痛い所はありませんか?」
こう言う時の香世は妙に積極的で、
拒む事も出来ず、なすがままに身を預けるしか無い。
手のひらを握られて、表に裏に返されて
顔を近付けてじっくり見られるから、
若干照れ臭い。
そっと手の甲を撫でてくるから、ビクッと反応してしまう。
「痛いですか?少し腫れてる気がします。」
しゃがみ込んで見ていた香世が顔を上げ俺を見上げてくる。
敵を素手で殴ったから確かに少し痛いなと思うが、そんな事は口が裂けても言えない…。
「…大丈夫だ。」
香世が軍病院まで駆けつけて来たのは予想外で、動揺はしたが嬉しくもあった。
前田に礼を言いながら、
香世を落ち着かせる為、近くの長椅子に座らせる。
かける言葉が見当たらない…
しばし無言で寄り添うが、
香世は一層俯いてしまい顔を伺い見る事も出来ない。
背中を優しく撫でてみる。
ヒックヒックと肩を揺らすから逆効果だったかと思う。
だが、触れてしまった手を離す事も出来な い。
「香世、もう大丈夫だ。心配いらない。
そんなに泣くな…。」
そっと寄り添いそう呟く。
香世が顔を上げて、真っ赤な目で涙を溜めて俺を見てくる。
思わず抱きしめたい衝動に駆られるが、
気持ちをぎゅっと制御して、
「来てくれてありがとう。心配かけて悪かった。」
改めてお礼を言う。
ふるふると首を左右に振る香世のあどけない仕草が、可愛いなと思って見つめてしまう。
俺は照れ笑いしながら前を向き、
診察室のドアを見つめる。
「正臣様…頬に…傷が…。」
香世が不意に手を伸ばし俺の頬に触れるからビクッとして目を見張る。
「大丈夫だ…、痛く無いから。」
何気なく離れようと試みる。
「少しお待ち下さい。」
香世がパタパタと洗面所に駆けて行き、
ハンカチを濡らして戻って来る。
心配顔で近付いて来て、
顔を濡れたハンカチで優しく拭いてくれる。
「沁みますか?」
「…いや、大丈夫だ。」
「他に痛い所はありませんか?」
こう言う時の香世は妙に積極的で、
拒む事も出来ず、なすがままに身を預けるしか無い。
手のひらを握られて、表に裏に返されて
顔を近付けてじっくり見られるから、
若干照れ臭い。
そっと手の甲を撫でてくるから、ビクッと反応してしまう。
「痛いですか?少し腫れてる気がします。」
しゃがみ込んで見ていた香世が顔を上げ俺を見上げてくる。
敵を素手で殴ったから確かに少し痛いなと思うが、そんな事は口が裂けても言えない…。
「…大丈夫だ。」