冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

「我々は、二階堂中尉の部下であります。
中尉は本日どうしても外せない会議がありまして、自分が代わりにお迎えに上がりました。
どんな手を使ってでも連れて帰るまで戻って来るなと、指示を頂いていますのでご安心ください。」

二階堂中尉?
どこかでお名前を聞いた事があるような
…無いような……。

なぜそんな見ず知らずの私を助け出してくれるのだろう?

「何を言っているのかさっぱり分からないんですが…もう彼女は花街の藤屋に行く事が決まっているんですよ。軍人さん。」
仲買人がそう言って鼻で笑う。

「では、その藤屋へ交渉に着いて行きます。
通行は可能か?」
門番に真壁は尋ねる。

真壁誠は今年25歳になったばかりだ。

第一部隊の近衛兵と言う軍の花形に所属し、
中隊長として二階堂が1番に信頼を寄せている部下である。

躯体は細身だが筋肉質で身長182センチ。
185センチほどある二階堂には劣るが、
なかなかの男前で、くっきり二重の垂れ目気味の目が優しさを醸し出している。

「申し訳ないが、通行証が無いと通す訳にはいきません。」

「それはどのように手に入れるのですか?」

「まぁ、その格好ではまず通せませんね。
武器や装備は持ち込み禁止ですし、
警察や軍人はプライベートじゃ無いとまず通せません。」
門番はそう理不尽な事を言う。

「分かりました。
では、藤屋の女将をこっち側に連れてきて頂きたい。」
真壁は香世に手を差し伸べる。
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