冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
このまま部屋に連れ込みたいと思う衝動を
抑え、廊下は冷えるからと香世を部屋に入れる。

「おやすみなさい。」
襖越しに香世が言う。

「おやすみ。」
挨拶を交わし自室に入る。

正臣は布団に寝転がり、
この1週間悩んでいた事は何だったのかと思い息を吐く。

ホッとしたのと同時に信じられない気持ちが強くて、夢なのかとつい思ってしまったが…

抑えきれない気持ちが溢れ出す。

しかし、香世の父親の事をちゃんとするまではと気持ちを制御する。

香世が側に居てくれさえすれば他には何も要らないと思うほど、
気持ちが満たされ安定するのが分かる。

一方香世は、部屋でしばらく放心状態だった。

正臣様も三年前から私を探してくれていたなんて嬉しい。

気持ちが通じ合った高揚感と、
これからの不安やいろいろな気持ちが混ざり合って、動悸は治らずなかなか眠りにつく事が出来なかった。

< 130 / 279 >

この作品をシェア

pagetop