冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
「これで全員か?便所は?物置までくまなく探せ。」
主犯格らしき人物が部下に指示する。

全員で5人ほど皆、頭巾を被り顔は分からない。
目的は何?
お金の請求ならこんな事しないで直ぐに立ち去るはずだし、何を要求しているの?

香世は少し冷静になった頭で考える。

どうやってこの場を切り抜ける?

「我々の大義名分は、この銀行の横暴かつ残虐極まり無い態度を見兼ねて立ち上がった。
我々は被害者である。」

銀行の被害者…
父の会社のようにお金を借りられ無かった人達だろうか…

それか…取り立てが厳しくて払えなくなってしまったのだろうか…

香世はいろいろと思いを巡らす。

「ここに籠城して奪われた土地や自宅を取り戻すのが目的だ。」

我が家と似た境遇だと香世は思う。

借りたお金が返せなくなって別荘や土地を売って何とか借金は返したけれど…

それは父の無謀な会社経営のせいで、
見通しも立たず借受したからであって銀行のせいでは決して無いのだ。

この人達だってそう言う事なのでは無いのだろうか…。
だけどその間違った大義名分の為、
まったく関係の無い人を巻き込むのは違うと思う。

ここにいる人達をどうにかして助けてあげる事は出来ないだろうか…香世は考えを巡らす。
< 180 / 279 >

この作品をシェア

pagetop