冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

意識不明の重体

そのまま香世は軍病院に運ばれ、
出来る限りの処置を施す。

沢山の管に繋がれて処置が終わったのは明け方だった。

正臣は心を無くしたかのように、
香世のそばに寄り添い手を握り、
ひたすら申し訳なかったと心で詫びる。

願う事はただ一つ、
目を覚ましてくれと寝ずに祈り続ける。

明け方、部下の真壁が病室に訪れる。

「二階堂中尉、本日は朝から昨日の報告会議となっております。参加可能ですか?
自分が代わりに出る事は不可能に近く…
このような時に大変申し訳けありませんが
出席して頂きたいのですが…。」

どう見ても痛々しいほど憔悴しきった
正臣にかける励ましの言葉もなく、
真壁は、淡々と事務作業のように話しかける事しか出来ない自分を不甲斐なく感じてしまう。

「分かった。このまま本部へ行く。」
正臣がおもむろに立ち上がり虚な目で歩き出す。
その後を真壁は追いながら、正臣の事を心配する。
「二階堂中尉、一度自宅に戻り身を清め、
食事をとるべきです。
少しだけでも身を休めなければ貴方が倒れてしまいます。」

「…分かった…一度戻る。」
車に乗り込み真壁の運転で自宅に帰る。

「香世様はきっと大丈夫です。
必ず目を覚まします。
目覚めた時、貴方のそんな姿は見たく無いはずだ。」

正臣の今の姿は、痛々しくて見ていられない。

「俺は…あの時、かける言葉を間違えたのかもしれない。」
力無く正臣はそう呟く。
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