冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
「分かった。では、今からお前を抱く。」

正臣は立ち上がり、香世を軽々抱き上げ歩き出す。

香世の心臓はドキンと鳴り響き、
身体中を緊張が駆け巡る。

突然の急接近に驚き固まり、
息をも忘れるほどに戸惑う。

「あ、あの、二階堂中尉…様……
あの……ど、どちらに……?」

「俺の自室だが、何か問題でも?」
冷めた声でそう言われて、
間近に見下ろされた瞳は、
綺麗に澄んでいて妖艶さを醸し出している。

「わ、私で、貴方様のお相手は、務まるのでしょうか?……」

この先どう言う事が起こるのか、
男女がどのように交わるのか、
全くと言っていいほど無知な香世は、
未知な世界に戸惑い、慄く。

どうせ、花街にまで落ちたこの身、
早かれ遅かれ通らなければならなかった道だから、覚悟を決めなさい。
香世、泣いたらダメよ。

そう自分自身に言い聞かせる。

震える身体を両手で押さえながら、
正臣に抱えられてなすがままに運ばれて行く。

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