冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
病室に向かう正臣の足はどうしても早歩きになってしまっていた。

これ以上香世を傷つける事は何人たりとも許せない。それが香世の父親だとしても。

正臣は強い憤りを感じながら香世達が待つ病室の扉を開ける。

「お待たせしました。自分も同席してよろしいですか?」

「勿論ですわ。」
姉が安堵の顔を向け、そっと香世を伺うと同じようにホッとしているように見える。

それから、医者と向き合って3人で今後の生活について聞く。

頭を強く打っている香世は、
少なくても後1カ月程は安静に暮らす事。
頭痛や頭が重いなどちょっとした体調不良も見逃さないように、自分を労り休む事。

お風呂は短めに睡眠は多め、体が疲れたと感じた時はちゃんと休息を取り、
水分は多めに摂る事。
週に一回の通院を忘れない事。

他にもいくつかの注意点があったが、
何よりも再度頭を強く打つような事があった場合、命をも脅やかす事になると宣告された。

3人はそれぞれ真剣な面持ちで医者の話を聞き、噛み締める。

「それでは、もし何か心配な事がありましたら、いつでもご連絡下さい。
ご退院おめでとうございます。」
と、医者は頭を下げて病室を後にした。

それから諸事情を看護婦から聞き帰路に着く。
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