冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
眼鏡の男は鞄から何かを取り出し香世の前まで歩いて来たかと思うと、
分厚く包まれた風呂敷包みを差し出す。

「ここに、1万円があります。
この先、女1人で生きるのには十分なお金だと思われます。
貴方にはこれを持って正臣様との縁を切って頂きたい。」

眼鏡の男は、感情も出さず淡々とした顔で香世に言い聞かせる。

香世はハッとして、
一気に地面に叩きつけられたかのように
ズシンと体が重くなるのを感じた。

目の前の風呂敷包みを見つめ、

ああ、これは手切れ金なんだと頭の何処かで納得をする自分がいる。

決して私の存在は認められていた訳では無く、ただ正臣様によって守られていただけに過ぎないんだ…

しばらくその風呂敷包みを見つめたまま、
放心状態になる。

「まぁ、無理もない。
正臣に会ってから貴方は愛されていると錯覚していたのかもしれないからな。
少し考える時間を差し上げよう。
ただ、正臣には早く跡継ぎをと言う声が上がっている。普通なら1人や2人子がいても良い年頃だ。貴方自身もそうであろう。
こんな所に長居をしていていいのか?」

私は…正臣様の人生の邪魔をしているんだろうか…香世はそう思うと、

頭の中でガンガンと音が鳴り響くのを感じ
こめかみがぎゅっと痛くなる。
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