冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
対面
その彼女に3年ぶりに会う。
まさか花街の遊郭で会う事になろうとは
と、二階堂は苦笑いした。
「どうもお待たせしました。
女将の藤田です。貴方が香世の許嫁かい。」
スーッと襖が開き初老の女と、先程の番頭が入って来る。
「いかにも、こちらが我々の上司である、
二階堂中尉であります。」
そう真壁が伝える。
女将と番頭が下手に座り話し出す。
「香世の身請けをしたいと言ってましたな。彼女は200円でうちに引き取られた。
二階堂様はいくら出されるつもりですか?」
席に着いたところで番頭は直ぐに金の事を話してくる。
二階堂は不愉快な気分になり眉間に皺を寄せながら、
「本来、人の価値は金なんかで決められるものでは無い。」
と、咎める。
「まずは香世殿を連れて来るのが先ではないのか?」
低く良く通る声と、落ち着き払った態度でそう言う。
女将は手を叩く、
10代そこそこの子供が
「失礼します」
と言って現れ、こそこそと耳打ちして一礼して部屋を出て行く。
真壁は人知れず心を痛める。
「こんなに小さな子供までここでは働かせているのですか?」
「軍人さんには分からないだろうが、
世の中には子を売らなければ明日のご飯も食べられない人々が沢山いるんだ。
あの子らはここに入れば食べ物には困らないし、自分の親だって助けられる。
アンタらがどう思うか知らないが…
私ゃ、世の中の為に良い事をしているんだと思ってるよ。」
ここにはここの倫理があり、助けるにも咎めるにもそうされると困る人々がいる…。
真壁はため息を一つ吐き…
自分にはどうする事も出来ないのだと項垂れる。
無言で向かい会う時間が数分続き、
先程の子供がスーッと襖を開ける。
「お待たせ致しました。お連れしました。」