冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
「姉さん、もう着物を脱いでしまうの?
せっかく綺麗だったのに、
軍人さんは気に入らなかったの?」

真子は飴を舐めながら香世を見つめる。

「真子ちゃん、あの軍人さんがね。
私と一緒に真子ちゃんも外の世界に出してくれるんだって。一緒に行ってくれる?」

香世はしゃがんで真子と目を合わす。

「そこは、ご飯が沢山食べられる?
真子でもお仕事できて稼げる?」
健気にそう聞いてくる。

「分からないけど、ここよりはきっと優しい所だと思うよ。」

「折檻されない?ご飯抜きにされない?」

すがるように聞いてくる真子の現状が、
手に取るように分かった。

「あの、軍人さん見た目はちょっと怖いけど、きっと優しい人だと思うよ。
私達にお金を積んでここから出してくれるんだって。」
香世は出来だけありのままを話す。

「じゃあ、お金持ちなんだね。
牡丹姉さんは好いた人がお金を積んでくれたから、花街を出て幸せになるんだって言ってたよ。」
にこりと笑い真子が言う。

「そう。じゃあ、一緒に行こうよ。
お父様やお母様に会えるかもしれないよ。」

「本当に?会いたい!!」
香世に抱きついて真子が喜ぶ。

こんな事を言って本当に会わせてあげられるのか、若干の不安はあるけど…。
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