冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
香世は素早く後片付けをして玄関へ行くと、
元気に『桜』を歌う真子を持て余しながら、
正臣が玄関のあがり框に腰を下ろし待っていた。
正臣は香世を遅いと咎める事も無く、
スッと立ち上がり草履を履く香世に手まで差し伸べてくれる。
正臣の人となりを少し知った手間、
自分の中で、昨日感じた冷酷な軍人と言う正臣のイメージが払拭されてしまった事に気付く。
この人は感情を出すのが不器用なだけで、
とても優しい人なのだと思ってしまうから
不思議なものだ。
父だったらきっと大きな声で歌う事も、
待たせられる事も嫌い、怒り苛立っただろう。
父以外の男性を知らないからどうしても比べてしまうのだが…。
「行くぞ。」
正臣が玄関を出て車のドアを開けてくれる。
嬉しそうに真子は飛び乗り、早く早くと香世を急かす。
香世も微笑み車に乗り込むのを見届けて、
正臣はドアを閉めてくれる。
タマキと他の女中も出て来て見送りする。
「夕飯は要らないから、今日は早めに上がっていい。」
車に乗り込む前に正臣はタマキにそう告げる。
「真子様、いつでも遊びに来て下さいね。」
タマキが寂しそうに真子にお菓子の袋を握らせる。
「ありがとうございます。
うち、学校が始まるまで毎日来るよ。
姉さんにお勉強を教わりたいから。」
ニコニコと真子がそう言うから、
決して寂しい別れにはならなくて、
「では、明日も美味しいお菓子をご用意して待っております。」
と、タマキも笑い頭を下げる。
元気に『桜』を歌う真子を持て余しながら、
正臣が玄関のあがり框に腰を下ろし待っていた。
正臣は香世を遅いと咎める事も無く、
スッと立ち上がり草履を履く香世に手まで差し伸べてくれる。
正臣の人となりを少し知った手間、
自分の中で、昨日感じた冷酷な軍人と言う正臣のイメージが払拭されてしまった事に気付く。
この人は感情を出すのが不器用なだけで、
とても優しい人なのだと思ってしまうから
不思議なものだ。
父だったらきっと大きな声で歌う事も、
待たせられる事も嫌い、怒り苛立っただろう。
父以外の男性を知らないからどうしても比べてしまうのだが…。
「行くぞ。」
正臣が玄関を出て車のドアを開けてくれる。
嬉しそうに真子は飛び乗り、早く早くと香世を急かす。
香世も微笑み車に乗り込むのを見届けて、
正臣はドアを閉めてくれる。
タマキと他の女中も出て来て見送りする。
「夕飯は要らないから、今日は早めに上がっていい。」
車に乗り込む前に正臣はタマキにそう告げる。
「真子様、いつでも遊びに来て下さいね。」
タマキが寂しそうに真子にお菓子の袋を握らせる。
「ありがとうございます。
うち、学校が始まるまで毎日来るよ。
姉さんにお勉強を教わりたいから。」
ニコニコと真子がそう言うから、
決して寂しい別れにはならなくて、
「では、明日も美味しいお菓子をご用意して待っております。」
と、タマキも笑い頭を下げる。