冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
お風呂から上がりそそくさと部屋に戻る。
今日から2階の部屋を自室として使う様に
タマキから言われている。
正臣の隣の部屋だから、
香世はそれだけで緊張してしまう。
そっと足音を潜めて階段を上がる。
それでもおやすみの挨拶はするべきだろうと思い立ち、正臣の部屋の前まで足を運ぶ。
「正臣様、お風呂をありがとうございました。
お休みなさいませ。」
襖は開けずに廊下から声をかける。
カタンと部屋から音がして、
「香世、ちょっと入って来い。」
と、正臣から声がかかる。
香世は少し戸惑う。
先程の事もある…そして、夜に2人きり…。
「…はい、失礼します。」
そっと床に正座して襖に手をかける。
その一瞬先に中から襖がスーッと開き、
「廊下は冷える、普通に入って来い。」
と、正臣に腕を引かれて室内に引っ張られる。
「あ、の…何でしょうか?」
正臣の部屋は続き間になっていて、
手前には机があり、書物がたくさん並べられた棚が部屋の壁沿いに並べられていた。
本好きな香世は、どうしても本に目がいってしまう。
「書物が気になるのか?」
その様子を見て正臣が聞いてくる。
「あ、いえ…まるで本屋さんの様だと思ったものですから。」
座布団を差し出されて座る様に促される。
「この家はかつて祖父母が余生を送った場所だから、祖父が残した本が沢山残っているんだ。気になるものがあるのなら、自由に持って行ってくれて構わない。」
「ありがとうございます。」
嬉しさが込み上げて、香世はふわっと笑顔になる。
「こんな物で香世が笑顔になるとは…
知らなかった。」
独り言の様に正臣はそう言って、
おもむろに立ち上がり本を一冊手に取る。
「俺は生憎忙しくてあまり読む時間が無いのだが、ここら辺は著名な物書きが書いた本だ。」
おもむろに香世に差し出すので、
立ち上がり本を受け取る。
「この本は私も読んだ事があります。
花街がどんな場所なのか知りたくて……。」
ハッとして香世は俯く。
本から得た知識だけで行ったのかと、
呆れられてしまうかもと思ったのだが、
特に正臣はそこには触れず。
今日から2階の部屋を自室として使う様に
タマキから言われている。
正臣の隣の部屋だから、
香世はそれだけで緊張してしまう。
そっと足音を潜めて階段を上がる。
それでもおやすみの挨拶はするべきだろうと思い立ち、正臣の部屋の前まで足を運ぶ。
「正臣様、お風呂をありがとうございました。
お休みなさいませ。」
襖は開けずに廊下から声をかける。
カタンと部屋から音がして、
「香世、ちょっと入って来い。」
と、正臣から声がかかる。
香世は少し戸惑う。
先程の事もある…そして、夜に2人きり…。
「…はい、失礼します。」
そっと床に正座して襖に手をかける。
その一瞬先に中から襖がスーッと開き、
「廊下は冷える、普通に入って来い。」
と、正臣に腕を引かれて室内に引っ張られる。
「あ、の…何でしょうか?」
正臣の部屋は続き間になっていて、
手前には机があり、書物がたくさん並べられた棚が部屋の壁沿いに並べられていた。
本好きな香世は、どうしても本に目がいってしまう。
「書物が気になるのか?」
その様子を見て正臣が聞いてくる。
「あ、いえ…まるで本屋さんの様だと思ったものですから。」
座布団を差し出されて座る様に促される。
「この家はかつて祖父母が余生を送った場所だから、祖父が残した本が沢山残っているんだ。気になるものがあるのなら、自由に持って行ってくれて構わない。」
「ありがとうございます。」
嬉しさが込み上げて、香世はふわっと笑顔になる。
「こんな物で香世が笑顔になるとは…
知らなかった。」
独り言の様に正臣はそう言って、
おもむろに立ち上がり本を一冊手に取る。
「俺は生憎忙しくてあまり読む時間が無いのだが、ここら辺は著名な物書きが書いた本だ。」
おもむろに香世に差し出すので、
立ち上がり本を受け取る。
「この本は私も読んだ事があります。
花街がどんな場所なのか知りたくて……。」
ハッとして香世は俯く。
本から得た知識だけで行ったのかと、
呆れられてしまうかもと思ったのだが、
特に正臣はそこには触れず。