冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
「香世は文学が好きなのだな。」
と、真剣な眼差しで本を探し始める。
「ここら辺は比較的古い書物だが、
有名な物を揃えている。」
香世も興味津々で本棚に近付き、
正臣が渡してくれる本をそっと受け取る。
「あ、凄い…。
この本は廃版になっていて、
なかなか手に入らないものです。
うわ…ここら辺の本も貴重な古典です。」
香世はついつい嬉しくなって興奮してしまう。
正臣はそんな香世を眩しい物を見るように、
目を細め見つめる。
「古典文学が好きなのだな。
祖父が収集家で、古い物も結構あるから好きに選んでくれ。」
正臣は一歩引いて、香世が選びやすいように離れて見守る事にする。
香世は目を輝かせて、
1冊ずつ大事そうに手に取っては本を開く。
「何冊でも持って行ってくれていいが、
寝不足にならないようにちゃんと寝ろよ。
欲張らなくてもいつでも入って持っていってくれ。」
「ありがとうございます。」
香世は嬉しそうに頭を下げる。
「これほど綺麗な状態でこの時代の書物があるのは素晴らしいです。」
にこりと笑い、
背伸びをしながら高い位置の棚から一冊取り出そうとするから、
慌てて正臣は手を伸ばし代わりに取って手渡す。
「台が必要だな。」
そう笑いながら香世を見る。
「あ、ありがとうございます。」
香世は正臣との距離が急に縮められて、
驚き鼓動が乱れるのを感じる。
恥ずかしくなって本を抱きしめ一歩引く。
「それだけでいいのか?」
正臣は1人で選びやすいようにと、
机に戻り書き物を始める。
香世はもう少しだけ、と心で思いながら
本棚を丁寧に見ていく。