冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
朝食を食べ終えて、
香世はタマキと正臣の支度の準備をする。

「香世様、今週から旦那様が遅いお帰りなので、人手も足りていますし、
私だけ本家の方のお手伝いに行く事になりました。朝のお支度の方はお願いしたいと思います。」

「はい、分かりました。」
香世は頷き、タマキを安心させる。

「帰りは遅くなるようですので、
この部屋に着替えの着流しと寝着の浴衣を用意して置いて下さい。
旦那様は、何でも一通りは1人で出来ますから気にせず、いつも通りのお時間にお休みになって下さいね。」

「正臣様にも、そう言われたのですが…
本当にそれで良いのでしょうか?
家の主人が帰る前に横になるなんて…。」
心配顔の香世を見て、タマキはニコリと笑う。

「香世様は厳格なお家柄なのでしょうね。
正臣様はそのような堅苦しいのがお嫌いで 本家を出て、別邸で暮らすようになったのです。
それに普段はこう言う時、軍本部で寝泊まりされるのが常なのですけどよっぽど香世様が心配なのでしょうね。」

タマキが楽しそうにそう話してくる。

「…そう、なんですか?」

「なので、気にせずお休み下さいね。
何か分からない事があれば、
遠慮なく残る2人の女中に聞いて下さい。」

「はい、ありがとうございます。」
香世はタマキに頭を下げる。
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