冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
「香世様の実家にはこちらに居る事をお伝えして、会社についても話しを進めますか?」
前田には香世の父の会社の事についても秘密裏に動いてもらっている。
「あの会社を松下に頼もうと思っている。
香世もそれで良いと言っていた。」
「分かりました。日時を調整して話を進めるように伝えます。ボスも立ち合いますか?」
なぜだか前田だけ俺の事をボスと呼ぶのだが…。
「そうだな…
香世の父には会っておくべきだと思うから、その前に一度席を用意してくれ。」
「分かりました。
僕も香世様と一度お話をしたいんですけど、
香世様を見つけ出したのは僕の功績でしょ?乏しい情報からどんだけ苦労して探し出したと思ってるんですか。」
「…また折を見て会わせてやる。
今は待て、お前に会わせたら香世が混乱する。」
「何でですか?」
「彼女は3年前の俺との出会いを覚えていない…。」
「えっ…、本気ですか⁉︎」
「香世にとっては消したい記憶かも知れない…無理に思い出させたくは無い。」
「まぁ、香世様には怖かった記憶かもしれませんが…
それじゃあ、あまりにもボスが報われないです。」
何故が前田が肩を落としてがっかりしている。
「俺は香世さえ幸せであればそれでいい。」
それは本音だが…
出来れば俺の手で幸せにしたいとは思う。
だが、無理強いはしたく無い。
どうすれば彼女の心にもっと近付けるのだろうか…。