冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
軍本部に着くと待っていたかのように真壁が頭を下げて近付いて来る。

「おはようございます。二階堂中尉。」
敬礼をして俺を出迎える。

「おはよう。緊急の報告か?」
軽く敬礼を返し、司令本部の自室へと歩きながら真壁に問う。

「今日の極秘任務の件ですが、時間が変わり17時から招集との事です。」

「分かった。総理は国会議事堂か?」

「はい。今日は1日本会議との事、
終わり次第任務に入ります。」

「了解。定時で終わり次第合流する。
真壁は先に待機していろ。」

「はっ。よろしくお願いします。」
短い伝達で話は終わる。

今日から一週間の任務は現役総理大臣の警護だ。

普段なら俺が指示を出し部下が動くのだが、
総理が俺を直々に任命してきたらしく、
断る余地は無く仕方無く真壁と付く事にした。

しかも、
それは世間では知られていない総理の妾との相蜜を警護する任務の為、
知るは上層部だけの極秘任務になる。

今の俺にとって最優先は香世の事が全てで、
他人の色恋沙汰なんて関わっている場合では無いのだと、無性に腹が立つ…。

しかし、上からの命令に逆らう事も出来ず、
ひたすら任務遂行の為淡々と職務をこなすしか無い。
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