冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

本日の勤務は滞りなく定時で終わり、
真壁の待つ議事堂に向かう。

極秘任務の為軍服を脱ぎ、
紺色の背広にフロックコートを羽織り中折れ帽を被る。

昼もたいして食べず、書類仕事をこなした為流石に腹が減ったなと思う。

「お疲れ様っす。
夜勤大変ですね。これ、カステラ手に入りましたよ。後、あんぱん買って来ました食べますか?」
車に乗り込んで早々に、運転手の前田から差し入れを受け取る。

「ありがとう、さすがだな。
今日は昼飯を食べ損ねたんだ。」

「そんな事だろうと思いましたよ。」
ニカっと愛想良く前田が笑い車が動き出す。

「要人警護だと言う事ですけど、お迎えはどのように?」

「そうだな。時間が何時になるか分からない。多分、国有車を借りる事になるだろうから、お前は先に上がってくれ。」

「承知しました。
あと、松下様に連絡取りました。
快く承諾してくれ計画書も預かりましたので、また時間が空いたら目を通して下さい。」

「ああ、ありがとう。」
あんぱんをかじりながら束の間の休憩する。

そんな時ほど香世の顔が浮かぶから、
自分でも困ったものだと苦笑いする。

これが父が言う、うつつを抜かしている状態なのかは分からないが…
確かに俺の心の奥底に香世が棲みついてる感は否めない。

今夜は何時に帰れるのか…。
香世に一目でも会えるのなら…帰りたい。
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