冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
先に俺が車から降り周囲を伺う。

問題無いと確信し、首相を下ろし盾になりながら真壁と両側から囲い裏口に入る。

指定した通り、裏口近くの部屋の前で旅館の女将が待っており、無言で頭を下げ挨拶を交わし総理を部屋へ入れる。

「ありがとうございます。
我々は隣部屋で待機しますので、女将さんは通常勤務にお戻り下さい。」
真壁が女将に告げ、隣部屋に2人待機の為に入る。

豪華な和室に男2人まったく楽しめる余地も無く、入り口付近で真壁が廊下を監視する。

俺は窓側に行き外に目を光らす。

俺達の苦労など気にもせず首相は妾と束の間の相引きを楽しんでいる。

笑い声が時折聞こえるたびため息が出る。

そんな調子で3時間ほどもち場を交換しながら
警備にあたる。

9時過ぎやっと部屋から出て来た首相を再び車に乗せ自宅へと運び、今夜の勤務は終了となる。

「これ、1週間はキツイですね…。」
普段はあまり根を上げない真壁もさすがにぐったりと肩を落とす。

「お疲れ。
首相の妾が生まれ月だそうだ。
出来れば立ち合いたいのかもしれないが
さすがに無理だと毎日会う事で納得して貰ったらしい。
明日は違う料亭だ。
誘導の道と料亭の下見を事前に頼む。」

「お疲れ様でした。
明日早速、下見に出向きます。」
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