伯爵夫人の遺書
 しかし、だんだんと彼の行動は度が過ぎていきました。私が男性とすれ違うだけで嫌な顔をし、女性と話していてもすぐに会話を打ち切らせて自分の元に引っ張っていきます。

 そのうちに私が外に出て人と会うこと自体、嫌な顔をするようになりました。

 屋敷から出ないように命じられ、行動を厳しく制限されます。どうしても外に出る必要がある時は常に彼がぴたりと隣について離れません。

 「大事に守られていて幸せね」と、久しぶりに出たパーティーでご婦人から言われたことがあります。しかし、私には守られるというよりも、監視されているように思えてなりませんでした。

 ……外界と遮断され、監視されるくらいならば我慢できます。どうせ生家では虐げられてきたのですから、それを思えば何ともありません。


 しかし、ブレント様の態度はしだいに残酷になっていきました。

 その頃には屋敷で働く使用人は皆女性に変えられ、私は決して男性と関わらないように言いつけられていました。

 約束を破ればブレント様の機嫌を損ねるということは、十分過ぎるくらい思い知らされています。

 なので、男性の客人が来た時は決して顔を合わせないよう、細心の注意を払っていました。
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