伯爵夫人の遺書
***

「やだ、なにこれ……? 手紙……いや、遺書?」

 私は偶然見つけた手紙を呆然と見つめる。とんでもないものを見つけてしまった。

 ある春の昼下がり、まだ慣れないお屋敷の中をのんびり歩き回っていたら、入ったことのない小さな部屋を見つけた。

 好奇心から中へ入ると、そこは女性の部屋のようだった。

 すぐにピンと来た。

 ここはブレント様の前の奥様の部屋だと。

 勝手に入るのは申し訳ないと思いつつ、好奇心に負けて私は部屋の中へ入ってしまった。


 全体的に埃を被っているが、まだ人が住んでいたころの気配を感じさせる部屋だった。ふと、本棚に目を遣ると一冊の本が目に留まる。

 深い赤色のカバーのかかったその本は、私も小さい頃に何度も読んだ有名なもので、なんだか懐かしくなってつい手に取ったのだ。
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