伯爵夫人の遺書
 すると、中から封筒がすべり落ちてきた。宛名も何も書いていない真っ白な封筒。封はしていなかったので、中の手紙を簡単に取り出せた。そっと中身に目を通す。

 それが間違いだった。私は知らなくてもいいことを知ってしまった。


 私が三ヶ月前に結婚したブレント・エドモンズ伯爵は、紳士的で優しく、大変整った顔立ちをした男性だ。まだ二十七歳という若さなのに領主としても優秀で、周囲の人たちから一目置かれている。

 お父様もお兄様も、ブレント様のような素晴らしい方に嫁げるなんて、リサは幸せだと言う。私自身もそう思っている。

 私、リサ・アルドリッジ……今はリサ・エドモンズだけど……は、ブレント様とは違って平凡な娘だ。

 現在二十二歳で、明るい茶色の髪に、黒い目をした平凡な顔立ち。まあるい目が可愛いね、なんて言われることはあるけれど、美人だなんて言われたことはない。

 お父様もお兄様も、「リサは性格はいいんだけど、外見は平凡だよな」なんて悪気なく言う。

 だから、金髪碧眼で涼やかな目元のブレント様と並ぶと、こんな私が彼の妻だなんて、といつも申し訳なく思ってしまう。
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