伯爵夫人の遺書
 けれどブレント様はいつも優しく、「リサはとても可愛らしいね」と微笑んでくれる。「君がうちに来てくれて本当によかった」と。私はブレント様も、ここでの生活も好きだった。

 ブレント様の方も初婚であったなら、引く手あまたであろう彼が平凡な私を妻にしてくれることはなかったと思う。彼には二年前に亡くなったという最愛の奥様がいた。

 彼女の名前はエリザベス・エドモンズ。私とは違い、大変美しい女性だったらしい。

 美人で気立てが良く、周りの人たちからもよく愛されていた。

 ブレント様はそれはそれは彼女を愛していたそうだ。大切にし過ぎて外に出すことも好まず、どうしても外出が必要なときは常にナイトのように彼女をそばで守っていたと。

 ブレント様は優しいけれど、私にはそんな過保護な対応はしない。買い物もお茶会も自由に行っていいと言ってくれる。

 自由でありがたいけれど、ほんの少しだけ、私はブレント様に過剰なまでに愛されていた前の奥様がうらやましかった。

 きっと彼女はブレント様に大切に守られ、最期のときまで幸せに暮らしたのだろう。ずっとそう思っていた。


 しかし、今見つけてしまったこの手紙はなんだろう。

 ブレント様が奥様を鞭打つ? 見下して人格否定する? 普段接しているブレント様の印象とあまりにかけ離れていて、とても信じられない。

 そもそも、なぜこんな場所に遺書を。まるで隠しているみたいじゃないか。

 続きを読めばわかるだろうか。私は二枚目の便箋に指をかける。
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