悪役令嬢は友人の恋の行方が気になる
王太子テオドロスは驚いた表情をしたが、何かを悟ったのか、右の唇の端を少しだけ上げてステファニーをホールの中央へいざなった。チラリとマリアの方を見ると、彼女は顔を俯け、こちらを見てはいなかった。

心の中でマリアに謝りつつ、王太子に向き直る。先程とは違って、彼は憮然としていた。
「最後は彼女と踊りたいと思ったのに。」
踊りながらため息を吐く王太子は近くで見ても美しかった。
「申し訳ございません。ですが先程は私の意図を汲んで頂けたと思ったのですが。」
納得してステファニーと踊っているはずだ。
「もちろん理解したよ。彼女の為だろう。君の態度で周りの視線を確認できた。」
「ありがとうございます。」
「でもこれでは君が嫌がらせをされるのではないか?」
「その心配はございません。侯爵家の私に手を出そうと思う勇気ある令嬢はいないでしょう?」
そう言ってステファニーは強気な微笑みで王太子を見る。
「そうかもしれないな。」
彼は美しい形の眉をひそめて苦笑した。
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