悪役令嬢は友人の恋の行方が気になる
その青年がグロリス伯爵家を訪れたのは、寒さの緩んだ春の初めだった。

「ケント公爵家次男のロベールです。マリア嬢にお会いできて光栄です。」
騎士団の黒い制服を上品に着こなし、茶色の髪は短く揃えられ、青い瞳は穏やかな印象を与えている。
マリアが挨拶を返すと、ロベールはにっこりと微笑んだ。
「噂どおりの美しさですね。グロリス伯爵がこれまで隠しておられたのも納得です。」

隠されていた覚えはないが、確かに舞踏会などにはあまり行ってはいなかった。友人のステファニーがそういう場が好きではない事も理由のひとつではあった。

「これから、マリア嬢と仲良くさせて頂けると幸いです。」

どういうことかと父親を見上げると
「マリアの婚約者になっていただくのだよ。今日は顔合わせの為に来ていただいたのだ。」

心臓がドキリと音を立てた。
あまりの驚きに、目を見開いたまま、マリアは言葉を失った。
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