悪役令嬢は友人の恋の行方が気になる
「殿下、理由をお聞かせ願えますかな?」
強張った表情のバイロン侯爵が問いかける。
「我が娘は王宮で王太子妃教育を受けていたのではないのですか?」

「一言で言えば、ステファニー嬢に王太子妃としての資質は備わっていない。王宮の使用人たちの間でも、あまり評価は高くなかった。次期国王になる者として、彼女を王太子妃に選ぶ事は憚られる、と言う事ですよ、侯爵。」
「なんと!ステファニー!本当か?」
「お父様、申し訳ございません。私の力が及ばず殿下には誠意が伝わりませんでした。侯爵家の恥となってしまいましたので、この家を出ることもやぶさかではございません。」
ステファニーの言葉に、王太子も若干の焦り(何を言い出すのだ?)を見せたが、すぐに気を取り直し
「私はこの夏、いろいろな領地に出向いて気がついた。心優しく、民のことを真摯に考え、私欲のない綺麗な心の持ち主がいる事を。その人物こそが私の妃にふさわしいだろうと思ったのだ。」
と穏やかに語る。

「そ、その人物とは?この場で聞かせて頂けるのですか?」
バイロン侯爵は落胆した表情だ。
王太子は笑顔で
「マリア・グロリス嬢だよ。」
と答えた。
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