生徒会長さんの溺愛、とめられない。
「おかえり、雪! 遅かったな」
玄関の扉を開けると、エプロン姿のお兄ちゃんが出迎えてくれた。
伊藤璃。 それがお兄ちゃんの名前。
私と同じふわふわで桃色の髪に、人懐っこい性格。細身で高身長で一つ上のお兄ちゃんは、王子様を体全体で表したよう。
とってもモテるのに、彼女がいるという話は聞いたことがない。
「今日はコロッケ、食べて」
「うわぁ!今日も美味しそう、いただきます!」
私の家はお父さんが他界している。
でも、お母さんの実家が資産家だから、生活には困っていない。
正直、ギャンブル好きな父がいたときの方が、生活は苦しかった。
「お母さんから写真送られてきたけど、雪は見た?」
「みたみた。夕焼け、綺麗だった」
今日、お母さんは友達と温泉旅行に出かけている。
でも、私とお兄ちゃんが料理好きだから、普段のご飯も私か、お兄ちゃんが作ることが多い。