生徒会長さんの溺愛、とめられない。
「雪ー? どこにいるの?」
………夏帆ちゃんっ。
探しに来てくれたんだと分かって、必死に声を張る。
「………ほ、ちゃ……」
こ、声が出ないっ………。
トイレのドアを勢いよく開いて、廊下を駆け出す。
あまり使われていない旧校舎……。ほんとに誰もいない………っ。
「雪っ………」
あれ、翔平も探しに来てくれたの?
……私って友達に恵まれてるな。
そう実感して、心が暖かくなるも、声が出なくて。
「翔平………!」
か細い声しか出なくて、前を走っていく翔平には気づかれなかった。
………と、思っていたけど。
「雪!? ……いた……!」
翔平は私の細い声も聞き取れたみたい。
………良かった、翔平を無駄に走らせなくて……。
「どうしたの? 今は自習中だから、教室にも全然人いないけど………雪が自習中いなくなるのなんて、初めてだから」
「あ……えっと、葉月先輩とお話してて……」
「ああー、納得。会長のサボりに付き合わされそうになって、逃げてきたとか?」
さ、サボりって……。
先輩、普段もサボったりしてるみたいだったし………あはは………。
「ううん、葉月先輩、熱でちゃって……。そうだ! どうしよう翔平! 私先輩をおいてきちゃった………」
どうしよう………キス、されて逃げちゃったし……。
葉月先輩は私の顔なんて見たくないだろうな。
「ええっ!? あの会長が熱……?」
「そ、そうなの……。屋上に先生を連れてくるわけにもいかなくて……」
「屋上……? ふーん……俺、会長運んでるからさ、雪は先に帰りなよ」
何やら意味深な笑みでそう言った翔平。
屋上という単語に不自然に反応していたけど、きっと屋上が珍しかったんだろう。
「わ、分かった……? 先に帰っておくから、葉月先輩をよろしくね」
「オーケー。夏帆ちゃんと一緒に帰れよ?」
あ、そうだ、夏帆ちゃん………っ。
私はすぐに夏帆ちゃんに『ごめんね』スタンプを送った。
その後、心配メッセージがピコピコ。
ずっと鳴り続けていたのは、言うまでもない。