生徒会長さんの溺愛、とめられない。


『私はしよっかな……』

『大雅、スキ………』


ぼそりと呟かれた一言が、ずっと頭の中に残っている。


「実はさ……私、夏帆ちゃんがスキって言ったの聞こえたんだっ」


「………うそ!? 恥ずかしい……翔平にも聞こえたかな……?」


驚いた様子の夏帆ちゃんは、ちらりと観覧車へ続く列に並んでいる翔平を見た。


「あ………それはない。翔平、その時私のほっぺたにキスしようとしてて………」


多分冗談なんだけど、そっちに意識集中してるっぽかったし………夏帆ちゃんの一言は耳に入っていないと思う。


「え……!? まじかよ翔平……肉食系なんだね」

「いや、違くて……。場を和ませるための冗談だよ?」


肉食系という感じでは……ないよっ!


『悪い……怖かっただろ……』


急に屋上での葉月先輩がフラッシュバックして、思わず肩がびくりと跳ねた。


な、なんでここで、葉月先輩が……出てくるのっ。


私が一人でもんもんとしていると、夏帆ちゃんは大雅くんの方に走っていってしまった。


『雪が可愛すぎて、襲いそうになったんでしょ……分かった?』


本当に、私を襲おうとしてたのかな……葉月先輩……。

いやいや。夏帆ちゃんの憶測だって言ってたし……っ。


「今頃、葉月先輩………どうしてるんだろう……」


「………へ……!?」


ぽつりと呟くと、後ろに並んでいる帽子にマスク、メガネの男性が、驚いたように声をあげた。


………ん?


あれ………この人……どこかであったような……?


それに、なんとなく葉月先輩に似た声……。


「……もしかして。あなた葉月せんぱ……」


「ええっと……!? どういうことですか!?」


私の声を、夏帆ちゃんの大きな声が遮った。


< 66 / 118 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop