生徒会長さんの溺愛、とめられない。
終業式の日………俺がやらかした日まで遡る。
記憶……というか、意識が戻ったのは質のいいベッドの上だった。
「あ………会長、起きました?」
翔平………?
俺は、雪の膝の上で寝ていたはずだが……?
まさか、夢………そんなことまで頭をよぎる。
「屋上でめっちゃマヌケな顔して寝てましたよっ……あれ、会長が気に食わない奴らがいたら、殺されてましたよ………!」
俺のことが気に食わない奴ら―――のことは割愛する。………しょうもないからな。
「………翔平……記憶がないんだが。俺は、雪と一緒にいたはずじゃ……」
「ああ、そうみたいですよ。会長、熱出てたんで……雪は先生呼びに行こうとしてたみたいですよ?」
俺の考えは杞憂だったようで……雪との時間が夢ではなかったことに、少しホッとした。
だが………その後、翔平が発した言葉に、俺は耳を疑った。
「雪と、ちゅーしたんですって? しかも、大人なやつ………抜け駆けですよ、会長?」
怒ったような、暗い声でそう言った翔平。
別に怖くはないが………見に覚えがない。
雪と、キス……?
俺の額に汗が流れる。冷や汗をかいたのは2年ぶりだ。
「そ、それは、雪が言ったのか」
「そうですよっ。真っ赤な顔で“ちゅーした”って………可愛かったですけど、正直俺……ムカつきました……!」
やばい、やばい、待て………。
記憶がない、雪がいなかった、翔平はきっと嘘をついていない………。
パズルのピースが揃うかのように……確信できる根拠は並んだ。
「あれ……?」
翔平は、俺の様子を見て口の動きを止める。
笑顔のまま硬直した翔平は、俺の様子を見て心配の顔で近寄った。
今の俺は頭を抱え、顔は赤くし、うずくまる………相当情けない姿。
「どどっ……!? どうしたんですか会長……? 熱が引いてないのに無理しないでくださいって……!」
………いつも顔色を変えない俺の珍しい姿に、翔平は若干引いていた。
「そうだな……俺はもう、寝る! 忘れる!」
………そうやって現実逃避……馬鹿みたいだ。
翔平はドン引きしていた。
記憶はそこで途切れ………。
目が覚めると、2日と四時間ほどの時が過ぎていた。