生徒会長さんの溺愛、とめられない。


終業式の日………俺がやらかした日まで遡る。


記憶……というか、意識が戻ったのは質のいいベッドの上だった。


「あ………会長、起きました?」


翔平………?

俺は、雪の膝の上で寝ていたはずだが……?

まさか、夢………そんなことまで頭をよぎる。


「屋上でめっちゃマヌケな顔して寝てましたよっ……あれ、会長が気に食わない奴らがいたら、殺されてましたよ………!」


俺のことが気に食わない奴ら―――のことは割愛する。………しょうもないからな。


「………翔平……記憶がないんだが。俺は、雪と一緒にいたはずじゃ……」


「ああ、そうみたいですよ。会長、熱出てたんで……雪は先生呼びに行こうとしてたみたいですよ?」


俺の考えは杞憂だったようで……雪との時間が夢ではなかったことに、少しホッとした。


だが………その後、翔平が発した言葉に、俺は耳を疑った。


「雪と、ちゅーしたんですって? しかも、大人なやつ………抜け駆けですよ、会長?」


怒ったような、暗い声でそう言った翔平。

別に怖くはないが………見に覚えがない。


雪と、キス……?

俺の額に汗が流れる。冷や汗をかいたのは2年ぶりだ。


「そ、それは、雪が言ったのか」

「そうですよっ。真っ赤な顔で“ちゅーした”って………可愛かったですけど、正直俺……ムカつきました……!」


やばい、やばい、待て………。

記憶がない、雪がいなかった、翔平はきっと嘘をついていない………。


パズルのピースが揃うかのように……確信できる根拠は並んだ。


「あれ……?」


翔平は、俺の様子を見て口の動きを止める。

笑顔のまま硬直した翔平は、俺の様子を見て心配の顔で近寄った。

今の俺は頭を抱え、顔は赤くし、うずくまる………相当情けない姿。


「どどっ……!? どうしたんですか会長……? 熱が引いてないのに無理しないでくださいって……!」


………いつも顔色を変えない俺の珍しい姿に、翔平は若干引いていた。


「そうだな……俺はもう、寝る! 忘れる!」


………そうやって現実逃避……馬鹿みたいだ。

翔平はドン引きしていた。


記憶はそこで途切れ………。

目が覚めると、2日と四時間ほどの時が過ぎていた。



< 73 / 118 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop