生徒会長さんの溺愛、とめられない。
人肌のぬくもりが心地よくて、俺はしばらく雪を抱きしめて離さなかった。
「んん……っ。葉月先輩……っ」
俺がようやく離したのは、雪が身をよじったときだった。
理性を揺さぶってくるその甘い声を聞くと、何だか悪いことをしているような罪悪感に襲われる。
それにしても……。
「へ、変な声を出すなと……前も言ったはずだが」
ん……だの、ひゃ……だの、俺じゃなければすぐ襲われてる。
正直、わざとなんじゃないかと思っている。
「ご、ごめんなさい……」
俺の言葉に対して、雪は申し訳なさそうに謝った。
変な声……捉え方によっては暴言か……。
「雪。可愛い声出されると、心臓に悪いってことだ」
友達最後の日にまで、嫌な印象を持たれたくない。
そう思って発した言葉だったが、馬鹿正直すぎたかもしれない。
……みるみるうちに、雪の顔はりんごになった。
「ぐぬぬ………は、葉月先輩はずるいです……!」
「……へえ……?」
ぐぬぬって……何それ……かわい……。
でも、ずるいのは雪だ。
今だって可愛い擬音使って……、俺は雪のけんかを買うことにした。
俺ばっかりしてやられて……雪はずるい。
「その赤い顔……なに?………かわい」
姉ちゃんの漫画で見たことのあるセリフ。
………ちょっと待て。今、俺めっちゃキモくなかったか……?
あー……ほら。雪引いてる。
雪は目を回しながら、頭上にはてなマークをならべていた。
「い、今のは言ってみただけ……」
俺はものすごいことを言ってしまったのだと気づいて、慌てて言い訳を___。
しようとしたが。
いきなり雪の顔が近づいて、俺は言葉を飲み込んだ。
「えっ………!?」
ちゅっと可愛いリップ音。
そして、頬に、温かい感触が走った。